講座内容の例:ニュース解説講座

時事教養塾では、有料講座を受講された方向けに、「ニュース・ブリーフ」というニュース解説メールを送信しています。
ニュース解説講座では、このニュース・ブリーフの内容(ニュース5本について、官公庁の資料なども利用して解説)をもとに、ニュースの概要・背景などを解説し、受講生の方が興味を持ったニュースについて簡単な感想を発表してもらっています。
以下に、サンプルとして、9月1日のニュース・ブリーフの一部を掲載します。
 

 

・最低賃金、2030年代半ばに1500円を目標に 岸田首相が表明

岸田首相が「新しい資本主義実現会議」で、2030年代に最低賃金の全国平均を時給1500円にする新たな目標を設定すると発表しました。インフレによる実質賃金の目減りや国際比較で日本の賃金が低いことを考え、賃上げを目指すための目標となります。最低賃金1500円は野党が求めていた水準ですが、2030年代半ばという達成時期が適切かどうかが次の論点になります。

「物価高を上回る賃上げを実現するため、岸田総理大臣は、ことし全国平均で時給1000円を超えることになった最低賃金について、2030年代半ばまでに1500円に引き上げることを新たな目標にすると表明しました。」(NHK NEWS WEB 2023年8月31日)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230831/k10014179611000.html

 

 岸田総理は昨日、エネルギー食料品価格が高騰する中で、内需主導の経済成長を実現していくためには、賃上げが当たり前となる経済、そして投資促進が必要と述べて、今年の賃上げ率は3.58パーセントで30年ぶりの高水準、今年度の最低賃金額は全国加重平均1004円となり、目標の1000円超えを達成した、と現状をまとめました。そのうえで、最低賃金については、さらに着実に引き上げを行っていく必要があるとして、2030年代半ばまでに全国加重平均が1500円となることを目指すとしました。

https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202308/31shihon.html

 

岸田首相が上記の発表をしたのは、「新しい資本主義実現会議」の場でした。 

昨日の同会議では、名目賃金が上記のように上がっていても、インフレがそれ以上に進んでおり、GDPのうち労働者の取り分を示す「雇用者報酬」が実質で減っていることが示されました。

新しい資本主義実現会議2023年8月31日

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai21/shiryou1.pdf

 

国際比較では、30年間にわたって、G7各国の中で日本の名目賃金だけが上がっておらず、実質賃金が上がっていないのは日本とイタリアだけになっています。 

新しい資本主義実現会議2023年8月31日

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai21/shiryou1.pdf

 

最低賃金については、物価と為替レートを考慮すると、英独仏と韓国はいずれも日本より高くなっています。

新しい資本主義実現会議2023年8月31日

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai21/shiryou1.pdf

 

最低賃金1500円という水準は、野党や共産党系労組まで主張していた金額になります。問題は、2030年代半ばの達成目標が早いか遅いかでしょう。

 

菅前総理のブレーンと言われていたデービッド・アトキンソン氏によると、最低賃金引き上げはイギリスが適切なスピードで成功例、韓国が早すぎて失敗例だとしています。アトキンソン氏は、「最低賃金を賢く引き上げ、経営者がパニックにはならず、ショックを与える程度に引き上げるのが効果的」だとして、安倍政権時の最低賃金3%引き上げでは経営者にショックが足りず不十分だったと主張しています(東洋経済オンライン2019年2月1日)。

https://toyokeizai.net/articles/-/263406