米CPIが4月は3.4%に鈍化 米家計債務は過去最大

米CPIが4月は3.4%に鈍化 米家計債務は過去最大

米国の消費者物価指数(CPI)が4月は市場予想通りの3.4%に低下、同時に発表された小売データが予想より悪く、利下げ期待が高まって米株価は最高値を更新しました。FRBはそれでも利下げには慎重という見方も根強く、特に住居費の低下が遅いと言われています。一方、米国の家計債務は過去最大となって延滞率も上昇、インフレと高金利が中低所得家計の生活を圧迫しています。 

「米労働省が15日発表した4月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比で3.4%と3月の3.5%から鈍化した。インフレ率が第2・四半期初に再び低下傾向に転じたことが示唆され、市場では9月の米利下げ期待が高まった。」「ロイターによるエコノミスト調査では、前月比0.4%上昇、前年比3.4%上昇と予想されていた。」(ロイター日本版2024515日)

米CPI、4月は前年比3.4%上昇に鈍化 利下げ期待高まる | ロイター (reuters.com)

 

・利下げ期待の根拠は? インフレと高金利が家計債務に与える影響は?

 米労働統計局の発表によると、4月のCPIは以下のように、全品目の指数(青)も、食品とエネルギーを除いたコア指数(赤)も下がりました。今年になって、コア指数は下がり続けているものの、住居費等が理由で全品目の指数が上がっていたので、それが下落したのが新しい変化です。コア指数の下がり方もやや大きく見えます。

U.S. Bureau of Labor Statistics

Consumer Price Index - April 2024 (bls.gov)

 

このところ、市場予想を上回る物価指数が発表されていましたが、今回はロイターの市場予想通りでしたし、米商務省が発表した4月の米小売売上高が横ばいで、上昇という市場予想より悪かったので景気の過熱がおさまっているのではないか、したがってFRBは利下げを早めにするのではないか、という予想で、米株価は上がりました。

 

ロイターによると、昨日はS&P総合500種とナスダック総合がともに1%超上昇し、終値ベースの過去最高値を更新して取引を終えました。ダウ工業株30種も終値ベースの最高値を更新し、節目の4万ドルに接近、主要3株価指数は取引時間中の最高値も更新した、とされています(ロイター日本版2024515日)。

米国株式市場=最高値更新、CPI受け利下げ期待高まる | ロイター (reuters.com)

 

消費者物価指数を品目ごとに見ると、米労働統計局は、4月にはガソリンの指数と住宅費の指数が上昇、これら 2 つの指数を合計すると、全項目の指数の月次上昇の 70% 以上に寄与した、と発表しています。食品指数は変化がありませんでした。全項目指数は前年同月比で3.4%上昇、3月までの3.5%よりも小幅な上昇となり、食料とエネルギーを除いたコア指数は3.6%上昇でした。以下のように、エネルギー指数は今年になって中東情勢もあって上昇している一方、住宅費(shelter, 紫の系列)は低下傾向です。

U.S. Bureau of Labor Statistics

12-month percentage change, Consumer Price Index, selected categories (bls.gov)

  

ただ、パウエルFRB議長は、まだ利下げには慎重と見られています。今回のCPI発表の前日の講演で、パウエル議長は、最近のインフレ指標について「順風満帆な道のりになるとは思っていなかったが、誰もが予想していたよりも高かった」と述べた。「このことから明らかになったのは、私たちは忍耐強く、引き締め政策に任せる必要があるということだ」等と述べ、追加利上げは不可能ではないものの、予想されていないことを明らかにしました(New York Times, May 14, 2024)。

Fed Chair’s Confidence in Slowing Inflation Is ‘Not as High’ as Before - The New York Times (nytimes.com)

 

米当局の慎重な姿勢は、住居費の高さが一因と見られています。

 

ウォールストリートジャーナルによると、FRBは住居費上昇が鈍化し、最終的にインフレ率をFRBの目標である2%に押し下げるとみているとしつつ、「問題はその鈍化をすでに1年半待ち続けているが、まだ到来していないことだ。単に遅れているだけかもしれないが、一部のアナリストは、住宅市場のダイナミズムが変化し、今後も鈍化しないことを懸念している」と書いています(ウォールストリートジャーナル日本版2024514日)。

終わらぬ米インフレ退治、家賃高止まりが原因 - WSJ

 

インフレと高金利のため、米国の家計債務が過去最高になったことも最近発表されました。

インフレによる生活費の高騰で家計は債務を増やさざるを得ず、しかも高金利のために更に家計債務が増えているので、家計債務は増え続けています。

 

ブルームバーグは、ニューヨーク連銀が314日に公表した調査報告によると、家計債務は1-3月(第1四半期)に177000億ドル(約27695200億円)と、前四半期から1840億ドル(1.1%)増加したと報じ、理由として、物価上昇が続く食料品や家賃などが家計を苦しめ、生活必需品の購入にクレジットカード残高を膨らませざるを得ない状況になっている、としています。新型コロナウイルスのパンデミック以来、消費者の債務は3兆4000億ドル増え、増加分は格段に高い金利を反映しています(ブルームバーグ日本版2024515日)。

米家計債務が過去最大、インフレ直撃で返済遅延も増加-NY連銀調査 - Bloomberg

  

ニューヨーク・タイムズは、高金利にもかかわらず、経済は全体として強いが、「水面下では、多くの低・中所得世帯が苦境に立たされている」として、格差が拡大していると報じています。裕福な世帯、そして多くの中流階級でさえ、2020年以前の低金利時代に長期住宅ローンを組み、一方で、高金利で貯蓄に対するより高いリターンの恩恵を受けています。しかし、貧しい家庭では、クレジットカード残高への金利負担が高くなっています(New York Times, May 14, 2024)。

High Interest Rates Are Hitting Poorer Americans the Hardest - The New York Times (nytimes.com)

 

米政府がやるべきことは、高金利のよる中低所得者や中小企業の債務負担を軽減するような政策をとって、FRBの高金利政策のダメージを緩和することに見えます。

  

なお、今朝の外為市場では、いくらか円高になりました(ブルームバーグ日本版2024516日)。

円は対ドルで154円台後半に上昇、CPIと小売売上高で米利下げ期待 - Bloomberg